「読むのはできるのに、いざ書くとなると出てこない」「やっと覚えたと思ったら、数日でもう忘れている」。カタカナのなかなか定着しない様子に、思わずため息が出ていませんか。せっかく練習したのに、と思うと、こちらまで力が抜けてしまいますよね。
まず、安心できる結論をお伝えします。カタカナが「読めるけど書けない」「すぐ忘れる」のは、とても自然なことです。 カタカナは、ひらがなに比べて学校で習う時間も、日常で使う回数も少ないので、定着しにくいのは当たり前なのです。コツは、一度にまとめて覚えさせようとせず、うんと小さなステップに分けて、出会う回数を増やしてあげること。なぜ忘れるのか、どう忘れさせないかを、順番にお話ししますね。
なぜカタカナは「すぐ忘れる」の?
文字は、何度もくり返し出会うことで、記憶に定着していきます。ところがカタカナは、ひらがなに比べて、日常で目にする回数が圧倒的に少ないのです。絵本も、街の看板も、低学年が触れるものはひらがなが中心。だから、一度覚えても、その後に出会わなければ、記憶が薄れていってしまいます。これは記憶の自然な仕組みであって、お子さんの努力が足りないせいではありません。
そして、読めるのに書けないのは、カタカナに限らず、文字全般に言えることです。読む(見て見分ける)よりも、書く(何も見ずに思い出して再現する)ほうが、ずっと難しい作業だからです。読める時点で、文字を覚える土台はもうできています。あとは、書く力を少しずつ育てていくだけ。つまり「読めるけど書けない・すぐ忘れる」は、サボりでも遅れでもなく、出会う回数が足りないだけのサインなのです。
覚えた字を「忘れさせない」4つの仕掛け
大きく覚えさせようとせず、小さく分けて、くり返すのがコツです。忘却に負けないための4つの仕掛けを、表にまとめました。
| 仕掛け | やること | なぜ効くか |
|---|---|---|
| ①少なく絞る | 今日取り組むのは1〜3文字だけ | 負担が軽く、結局は早くそろう |
| ②ひらがなペア | 「か→カ」「き→キ」と既知の字に結ぶ | ゼロから覚えるより断然ラク |
| ③3ステップ書字 | なぞる→見て写す→隠して書く | 最難関に無理なくたどり着く |
| ④間隔をあけて再会 | 数日後にさりげなく出して確認 | 思い出す瞬間に記憶が強くなる |
①は、46文字を一度に求めないこと。少なく始めるほうが、子どもは負担を感じません。②は、形が似ているペア(「り→リ」「へ→ヘ」など)から始めると「そっくりだね」と気づけて、とっつきやすくなります。
③の書く3ステップは、難しさを少しずつ上げる方法です。最初はお手本をなぞる「なぞり書き」。次にお手本を横に置いて見ながら写す。最後にお手本を隠して、思い出して書く。一段ずつ成功体験を積めるので、自信もついていきます。
いちばん効くのは「間隔をあけて、もう一度会う」
4つの中でも、すぐ忘れる子にとくに効くのが、④の「間隔をあけて再会」です。一度覚えた字を、すぐではなく、少し忘れかけた数日後にもう一度出してみる。すると「あれ、なんだっけ……あ、そうだ!」と思い出す瞬間がやってきます。この「思い出そうとすること」そのものが、記憶を強くする近道なのです。
くり返し書かせるより、間をあけて「これ何だっけ?」と問いかけるほうが、ずっと定着します。そして、単体の字を練習するより、「アイス」「テレビ」「バナナ」など、好きな言葉の中で書くほうが、よく覚えます。
さりげない再会の場として、おすすめなのがお風呂です。湯ぶねから見える壁に、その週に覚えたいカタカナを数文字だけ書いたポスターを貼っておく。「これ何て読むんだっけ?」と一緒に読むだけで、机に向かわずに出会う回数を増やせます。ドリルの追加ではなく、生活のすき間に文字をしのばせるイメージです。
忘れても、責めないことがいちばん大事
そして、忘れても「また忘れたの?」と責めないこと。忘れるのは、脳のごく自然な働きです。やりがちな声かけを、少し変えてみましょう。
| ついやりがちな声かけ | こう言いかえる |
|---|---|
| 「また忘れたの? この前やったでしょ」 | 「忘れても大丈夫。また会えば覚えるよ」 |
| 「ちゃんと書けるまで何回も」 | 「今日はこの1文字。好きな言葉で書こう」 |
| 「読めるんだから書けるでしょ」 | 「読めてるのがすごいの。書くのはこれからだね」 |
「忘れちゃっても大丈夫だよ。また会えば、ちゃんと覚えるからね」と、何度でも明るくくり返してあげてください。「読めるならもう十分」というくらいの気持ちで構えていると、子どもも気楽に書きに向かえます。書く力は、その安心の上に、あとからゆっくり育っていきます。
以前、「覚えても3日で忘れる」と悩むお母さんがいました。毎日同じ字を書かせても定着しなかったそうです。そこで、書く量を減らし、お風呂の壁に週3文字だけ貼って「これ何だっけ?」と数日おきに聞くようにしたら、不思議とすっと残るように。たくさん書くことより、間をあけて思い出す回数のほうが、記憶には効いたのです。
「書く力」は、読みの定着が先にあると伸びやすい
書くのが苦手なとき、つい書く練習ばかりに目が向きますが、その前に「すらすら読める」状態を作っておくと、書く力はぐっと伸びやすくなります。読めない字を書こうとするのは、知らない人の顔を思い出して描くようなもの。まずは見れば読める字を増やしておくと、「思い出して書く」ときの手がかりが、頭の中にしっかりできているのです。
だから、書けない字があっても、あわてて書かせるより、まずは読める回数を増やしてあげてください。お風呂のポスター、お菓子の袋、テレビのテロップ。読んで「分かる」が増えてくると、ある日「書いてみたい」が自然とやってきます。読みが先、書きはあと。この順番を意識するだけで、つまずきがぐっと減ります。
手を動かす遊びも、書く力を支えている
もうひとつ、机に向かう練習以外で書く力を支えているのが、指先を使う遊びです。鉛筆を思いどおりに動かすには、細かく手を使う力(巧緻性)が必要で、これは粘土・シール貼り・折り紙・ひも通しといった遊びで育ちます。書く練習に親子で疲れてきたら、いったん鉛筆を置いて、手を使う遊びに切り替えるのも、立派な「書く準備」です。
「書けるようにするために遊ぶ」なんて意外かもしれませんが、低学年のうちは、遊びと学びの境界はとてもあいまい。手がよく動くようになると、カタカナの直線も安定して書けるようになり、「思い出せているのに手が追いつかない」もどかしさも、少しずつ減っていきます。書く・読む・遊ぶを、ぜんぶ地続きにして育てていきましょう。
よくある質問
Q. 毎日練習しているのに、すぐ忘れます。やり方が悪いのでしょうか?
A. やり方が悪いのではなく、「毎日同じ字」より「間をあけて思い出す」ほうが記憶に残りやすいのです。少し忘れかけた数日後に「これ何だっけ?」と再会させると、思い出す瞬間に定着します。量を増やすより、再会の回数を増やしてみてください。
Q. 読めるのに書けないのは、書く練習が足りないからですか?
A. 練習不足というより、読む(見分ける)より書く(思い出して再現する)ほうがずっと難しいからです。読めている時点で土台はできています。なぞり書きから始めて、お手本を隠す段階へ少しずつ進めば、書く力は追いついてきます。
Q. 一度にたくさん覚えさせたほうが、早く終わりますか?
A. 逆に、少なく絞るほうが早くそろいます。一度に多くを求めると負担で嫌になり、続きません。1〜3文字に絞って、好きな言葉の中でくり返すほうが、結果的に全部が定着していきます。
Q. ひらがなとペアにすると、かえって混乱しませんか?
A. 形が似ているペア(り→リ、へ→ヘ など)から始めれば、混乱より「そっくり!」という発見になります。すでに知っているひらがなを足場にするので、ゼロから覚えるよりラクです。似ていないペアは、慣れてきてからで大丈夫です。
生活のすき間に「再会」を組み込む
「間をあけて思い出す」と言われても、わざわざ時間を取るのは大変ですよね。でも、これは特別な勉強時間を作らなくても、毎日の生活のすき間に組み込めます。むしろ、そのほうが自然に続きます。
たとえば、お風呂の壁に週3文字のポスターを貼って、湯ぶねにつかりながら「これ何だっけ?」。朝ごはんのとき、牛乳パックやお菓子の袋のカタカナを「これ読める?」。お出かけの車の中で、看板の「コンビニ」「ガソリン」を探す。寝る前に、今日見つけたカタカナをひとつ思い出してみる。どれも30秒で終わる、ちょっとした声かけです。
机に向かう「お勉強」は1日5分でも、こうした生活の中の再会を足していくと、出会う回数はぐんと増えます。書く練習を増やすより、思い出す場面を生活に散りばめるほうが、苦手な子にはずっとやさしく、ずっとよく定着します。
カタカナは「小さく・くり返し・また会う」で定着する
カタカナが読めるのに書けない、すぐ忘れるのは、習う時間も使う回数も少ないからです。だから、1〜3文字に絞り、ひらがなとペアにして、なぞり書きから始め、数日後にまた出してあげる。この4つの仕掛けでくり返していけば、カタカナは確実に身についていきます。
「覚えたのに、また忘れてる」と、がっかりしますよね。でも、忘れるのは脳が情報を整理している証拠で、間をあけてくり返し出会いさえすれば、必ず定着していきます。今日は覚えてほしい字をひとつだけ選んで、「これ、ひらがなだと何だっけ?」とペアにして、一緒になぞってみてください。そして数日後、さりげなくもう一度。小さな再会の積み重ねが、いつのまにか確かな定着になっていきます。焦らず、いきましょうね。
カタカナのつまずき全体を見渡して、ほかの入り口も確かめたいときは、覚えにくい原因と入り口を整理したガイドも読んでみてくださいね。

