「書き順が自己流で、見ているとぐちゃぐちゃ」「何度教えても直らなくて、つい声を荒げてしまう」。正しく教えたいだけなのに、毎回バトルになって、お互いぐったり疲れていませんか。直してあげようとしただけなのに、子どもは「うるさい!」とふくれ、こちらも我慢の限界。そんな夜を何度もくり返している方は、少なくありません。
肩の力が抜ける結論を、先にお伝えします。小1のうちに書き順が多少めちゃくちゃでも、深刻に考えすぎなくて大丈夫です。 ただ、書き順には「字をきれいに、速く書くための合理的な順番」という意味があるので、今のうちにゆるやかに身につけておくと、あとがぐっとラクになります。大切なのは、バトルにせず、楽しく体で覚えること。そのカギになるのが「指書き」です。なぜバトルになるのか、どう直せばいいのかを、順番にお話ししていきますね。
書き順はなぜ大切? でも、今すぐ完璧でなくていい
書き順は、ただ大人が決めたルールではありません。その順番で書くと、線と線が自然につながり、字が整い、速く書ける。そんな「手の通り道」として作られています。だから自己流のままだと、これから画数の多い漢字に進んだとき、字が崩れたり、書くのにやたら時間がかかったりしやすくなるのです。小1で習うひらがなの書き順は、その先の漢字をラクにするための、いわば準備運動だと思ってください。
とはいえ、小1の段階で、すべての書き順を完璧にする必要はまったくありません。「だいたい正しい流れで書けている」なら、それで十分合格です。神経質に1画ずつ直すより、毎日よく使う字から自然に整えていくくらいの気持ちでいきましょう。
自己流になりやすいのは、こんな字
全部をいっぺんに直そうとすると、親も子もパンクします。まずは「崩れやすい字」を知って、優先順位をつけましょう。下のようなパターンは、多くの子が自己流になります。
| 自己流になりやすいパターン | 例 |
|---|---|
| 下から上へ書いてしまう | 「い」「け」の縦線を下から書く |
| 右から左へ書いてしまう | 横線を右から引く |
| 横線と縦線の順番が逆 | 「土」のような形で縦を先に書く |
| 画の多い字で迷子になる | 「ふ」「あ」「ぬ」「を」 |
優先順位は、名前に使う字や「い」「こ」「し」のようによく出てくる字、そして「ふ」「あ」のように画の多い複雑な字から。一度に欲ばらないことが、結局いちばんの近道です。
バトルになる本当の原因は、教える中身ではなく「直し方」
書き順バトルの多くは、教える内容ではなく、直し方そのものに原因があります。書いている途中で「違う!」とさえぎられる、何度も消してやり直させられる、「前にも言ったでしょ」と責められる。これでは、書くこと自体がどんどん嫌になってしまいます。
書いている最中の子どもは、字の形・筆圧・マスにおさめること、それだけで頭がいっぱいです。そこに横やりが入ると、集中も気持ちも一気に折れてしまうのです。やりがちな対応を、少し言いかえてみましょう。
| ついやりがちな対応 | こう変えてみる |
|---|---|
| 書いている途中で「違う!」と止める | 最後まで書かせてから、1字だけ手伝う |
| 「前にも言ったでしょ」と責める | 「ここ、いっしょに直すともっとかっこいいよ」 |
| 消しゴムで何度もやり直させる | 鉛筆を置いて、指書きで1回だけ |
書き順バトルをほどく「3ステップ」
直し方には、バトルにならない順番があります。私はいつも、この3ステップでお話ししています。
ステップ①:まず「書けてる」を認める
直す前に、できているところを先に言葉にします。「上手に書けてるね! ひとつだけ、もっとかっこよくなる書き方を教えてあげる」と、認めてから誘うと、子どもは身構えずに受け取ってくれます。最初に否定されると、もう耳がふさがってしまうからです。
ステップ②:鉛筆を置いて「指書き」
ここがいちばんのポイントです。鉛筆を持つと「上手に書かなきゃ」というプレッシャーがかかりますが、指書きなら気楽。書き順だけに集中して、体で覚えられます。指書きとは、鉛筆を持たずに、机や空中、手のひらに、指で大きく文字をなぞる方法です。
やり方はシンプルです。まず親が「いち、にー」と声に出しながら、大きく指でお手本を見せます。次に、子どもの手をやさしく取って、あるいは隣に並んで同時に、声をそろえて書きます。最後に、子どもひとりで、声を出しながら指書き。できたら「書き順マスター!」と拍手してあげてください。声に出す「いち、にー」のリズムが、書き順を記憶にしっかり残してくれます。
ステップ③:直すのは「書き終わってから・1字だけ」
直すのは、書いている途中ではなく、書き終わったあとに、楽しく1回だけ。そして一度に直すのは1字だけにします。途中で何度も手を止めさせないこと。これが、バトルを防ぐいちばんのコツです。
指書きは、机に向かわなくてもできる
指書きのいいところは、場所を選ばないことです。お風呂の湯気がついた壁になぞる。寝る前に布団の中で、子どもの背中に指で書いて「なんの字でしょう?」と当てっこする。車の中で、太ももをノート代わりにする。遊びにできるので、子どもは「勉強させられている」と感じません。
鉛筆書きは、「字の形」「筆圧」「マスにおさめる」「書き順」を、全部いっぺんにこなさなければならず、子どもにとっては相当な負担です。指書きなら書き順だけに集中できるので、すっと頭に入ります。
以前、「『あ』の書き順がどうしても直らない」と悩むお母さんがいました。練習帳で何度書かせてもバトルになるばかり。そこで鉛筆をいったん置いて、お風呂で湯気の壁に「いち、にー、さん」と声を出しながら一緒に指書きしてみたそうです。すると遊び感覚でくり返すうちに、いつのまにか鉛筆でも正しい順番で書けるように。机に向かわせることをやめたら、かえって早く身についたのです。
書き順が入りやすくなる「土台」も整えてあげる
指書きと並行して、もうひとつ見てあげたいのが、書くときの姿勢と鉛筆の持ち方です。実は、椅子に浅く座って体がぐらぐらしていたり、鉛筆をぎゅっと握りこんでいたりすると、手が思いどおりに動かず、書き順どころではなくなってしまいます。書き順が崩れる子の中には、「順番を知らない」のではなく「手が安定しないから、書きやすい方向につい流れてしまう」だけ、という子もいるのです。
足の裏が床につく高さに椅子を合わせる。机との距離を近づけすぎない。鉛筆は、軽く持てる三角鉛筆や、市販の持ち方サポートグッズを使う。こうした土台を整えるだけで、手の動きが安定し、正しい順番で書きやすくなる子は少なくありません。書き順の練習がうまくいかないと感じたら、いったん「順番を教えること」から離れて、座り方や持ち方を見直してみるのもひとつの手です。手先の動かしやすさそのものが気になるときは、鉛筆の持ち方や筆圧をやさしく整える運筆のサポートも合わせて見てあげてください。
それでも、なかなか自己流が抜けない時期はあります。そんなときは、無理に家庭だけで抱え込まず、お子さんの好きなキャラクターのなぞり書きドリルを1冊だけ用意したり、タブレット教材の「お手本の上を順番になぞる」機能を使ったりと、楽しく続く道具に少し頼るのもおすすめです。大事なのは、毎日バトルしてまで完璧にすることではなく、書くことを嫌いにさせないまま、ゆっくり整えていくことです。
よくある質問
Q. 書き順が違うと、テストでバツになりますか?
A. 小1のうちは、書き順そのものでバツになることはほとんどありません。ただ、正しい順番のほうが字が整い、速く書けるので、将来の漢字学習がラクになります。今は「だいたい合っていればOK」くらいの気持ちで、よく使う字から整えていけば十分です。
Q. 何度教えても自己流に戻ります。覚えが悪いのでしょうか?
A. 覚えが悪いのではなく、鉛筆書きだと負担が大きすぎて、書き順まで意識が回らないことが多いのです。鉛筆を置いて指書きにすると、書き順だけに集中できて、ぐっと入りやすくなります。戻ってしまっても責めず、遊びの中でくり返してあげてください。
Q. 全部の字の書き順を、いっぺんに直したほうがいいですか?
A. いいえ、一度にやると親子でパンクします。名前の字やよく使う字から、1日1字くらいのペースで十分です。崩れやすい複雑な字(ふ・あ・ぬ など)を少しずつ整えていくほうが、長続きします。
Q. 上の子は何も言わなくても正しく書けました。下の子だけ自己流で心配です。
A. きょうだいでも、書き順の入り方には個人差があります。上の子と比べると不安になりますが、その子のペースがあるだけ。指書きで楽しく、その子に合った速さで整えていけば大丈夫です。比べる相手は、お友だちやきょうだいではなく、その子の「昨日」にしてあげてください。
書き順は「指で・楽しく・少しずつ」
小1のひらがなの書き順がめちゃくちゃでも、焦らなくて大丈夫です。ただ、あとがラクになるよう、よく使う字からゆるやかに整えていきましょう。そのとき大事なのが、バトルをほどく3ステップ。まず書けていることを認める。鉛筆を置いて指書きで体に入れる。直すのは書き終わってから1字だけ。途中で止めて何度も直させると、必ずバトルになります。
毎回バトルになると、教えることそのものが憂うつになっていきますよね。でも、机に向かわなくても、お風呂や布団の中で、指1本あれば練習できます。今日はお子さんが苦手な1文字を選んで、「いち、にー」と声をそろえながら、一緒に指で書いてみてください。遊びの中で、書き順は自然と身についていきます。あせらず、楽しくいきましょうね。
文字の向きが反転してしまう鏡文字が気になるなら、無理に直さず見守る時期と声かけのページも合わせてどうぞ。ひらがなのつまずき全体を見渡したいときは、どこから手をつければいいかを整理した入り口ガイドも読んでみてくださいね。

