「数字の下にさくらんぼを2つ描いて、数を分けて……」
正直、親の私たちには見覚えのないやり方ですよね。「こんなまわりくどいこと、しなくても答えは出るのに」「うちの子、さくらんぼで余計に混乱してる」。そう感じてこの記事にたどり着いた方も多いはずです。
先に結論をお伝えします。
さくらんぼ計算は、決して意味のない遠回りではありません。「10をつくる感覚」を目に見える形にした”補助輪”です。 ただし、その子に今ピッタリ合っているとは限りません。合わなければ、無理にさくらんぼにこだわらず、別の道で「10をつくる感覚」を育てればいいだけです。
この記事では、なぜさくらんぼ計算でつまずくのか、その理由と、合わない子のための「代わりの教え方」を具体的にお伝えします。
そもそも、さくらんぼ計算は何のためにあるの?
さくらんぼ計算は、「8+5」のような繰り上がりの計算で、「まず10をつくる」という暗算のコツを、子どもにも分かるように図にしたものです。
- 8は、あと2で10になる
- だから5を2と3に分ける(←この2と3が”さくらんぼ”)
- 8と2で10、のこりの3を足して13
つまりさくらんぼ計算は、将来スラスラ暗算するための「10のかたまりをつくる練習」なんです。これを知らずに「なんで普通に足さないの」と教えると、親も子もこんがらがってしまいます。まずは「これは10をつくるためのお手伝いなんだ」と親が腑に落ちること。それだけで声のトーンが変わります。
さくらんぼ計算でつまずく3つの理由
理由1:そもそも「10の合成・分解」がまだ身についていない
一番多いのがこれです。さくらんぼで数を分けるには、「5は2と3」「7は3と4」といった10のまわりの数の分け方が、パッと出てくる必要があります。ここがあいまいなままさくらんぼの手順だけ教えても、毎回フリーズして当然なのです。つまずきの本体は、さくらんぼのやり方ではなく、その手前の「数を分ける感覚」にあります。
理由2:「書く作業」が多すぎて、頭がパンクする
さくらんぼを描いて、数字を2つ書き込んで、それを見ながら計算して……。低学年の子にとって、「考える」と「書く」を同時にやるのは想像以上に負担です。手先がまだ不器用な子だと、さくらんぼを描くだけで疲れてしまい、肝心の計算に頭が回りません。
理由3:親世代が習っていないので、教え方がブレる
私たち親は、さくらんぼ計算を習っていません。だから教えるたびに「あれ、どっちを分けるんだっけ」と自信がなく、その迷いが子どもに伝わってしまいます。これは親が悪いのではなく、世代でやり方が変わっただけ。知ればいいだけです。
さくらんぼが合わない子への「代わりの教え方」
さくらんぼ計算は手段の一つにすぎません。ゴールは「10をつくる感覚」を育てること。そこにたどり着けるなら、道はさくらんぼでなくてもいいのです。
代わり1:おはじき・ブロックで「10のかたまり」を手で作る
紙に描く前に、まずは具体物です。おはじきを8個並べて、「あと何個で10になるかな?」と2個足してみる。「10になったら、のこりはおまけで足すだけ」という流れを、手でさわって体感させます。幼児〜小3は、手を動かして納得した感覚が一番深く残る時期です。
代わり2:「10の階段(10になる組み合わせ)」を遊びで口グセに
「1と9」「2と8」「3と7」……10になるペアを、お風呂やお出かけ中にクイズにします。「ねぇ、6とあといくつで10になる?」と親から出題するだけ。これが瞬時に出てくるようになると、さくらんぼも暗算もスッと進みます。ドリル不要、勉強感ゼロでできるのが魅力です。
代わり3:「数え足し」を頭ごなしに否定しない
さくらんぼができない子が、8から「9、10、11、12、13」と数え足しで答えを出すことがあります。これを「ズルしないで!」と止めるのはNG。数え足しも立派な計算であり、繰り返すうちに「10をつくった方がラクだ」と子ども自身が気づいていきます。焦らず、今のやり方を認めてあげてください。
なお、「さくらんぼも数え足しも面倒だから、いっそ答えを丸暗記させたい」と感じている方は、その前にぜひ小1算数の繰り上がりは丸暗記でいい?覚えさせる前に知っておくことを読んでみてください。繰り上がり・繰り下がり全体の進め方は、親記事の【小1算数】繰り上がり・繰り下がりでつまずく子へにまとめています。
さくらんぼが「正解」じゃない。その子に合う道でいい
さくらんぼ計算でつまずいても、お子さんの算数の力が足りないわけではありません。多くは「10をつくる感覚」がまだ育っている途中なだけ。そして、その感覚はさくらんぼでなくても、おはじきや日常のクイズでちゃんと育ちます。
だから、もしお子さんがさくらんぼで混乱しているなら、「ちゃんと描きなさい」と何度も言う必要はありません。やり方を一つに決めつけず、その子がいちばん腑に落ちる道を選んであげれば十分。学校のやり方と違っても、ゴールである「10のかたまり」にたどり着けるなら、それは立派に正解です。
「みんなと同じやり方じゃないと」と心配になる気持ちは、よく分かります。でも、低学年で大事なのは、さくらんぼを上手に描けることではなく、「算数って分かるとうれしい」と感じる経験を一つでも多く積むこと。今日は赤いさくらんぼを一度お休みして、おはじきを並べながら「あといくつで10になるかな?」と、肩の力を抜いて一緒に遊んでみてください。その時間こそが、いちばん確かな土台になります。

