計算ならサッと教えられるのに、文章題になると、教えるこちらが何だかイライラしてくる。「だから、よく読みなさいって!」とつい強く言って、子どもは泣き出す……。文章題の時間が、毎回しんどくなっていませんか。やさしく教えたいのに、なぜか文章題だと続かない。その消耗、よく分かります。
先にお伝えしたいのは、文章題で特にイライラしやすいのには、はっきりした理由があるということ。文章題は「読む→イメージする→式にする→計算する」と考える段階が多く、”どこで詰まっているのか”が大人にも見えにくいのです。だから「全部できない」ように見えて、つい焦ってしまう。子どもがダメなのでも、あなたが短気なのでもありません。この記事では、文章題ならではの教えにくさをほどき、詰まりの場所の見極め方、答えを言わずに導く「ヒントの階段」、そして文章題と親自身の感情を切り分ける考え方まで、順番にお話しします。
どうして「文章題」は、特に教えるとイライラするの?
計算は「やること」が一つですが、文章題はいくつもの段階を一人でたどります。文を読む → 場面をイメージする → 足すか引くか決める → 式を書く → 計算する。このどこか一つでも詰まると、答えにはたどり着けません。
でも、親には「どの段階で止まっているか」が見えにくいので、「何も分かっていない」と感じて焦ってしまう。これが、文章題特有のイライラの正体です。逆に言えば、「どこで詰まっているか」さえ見えれば、教え直すのは一段だけで済み、イライラはぐっと減ります。「全部できない」のではなく、「どこか一段で止まっているだけ」。この見方の切り替えが、最初の一歩です。
まず「どこで詰まっているか」を見極める
イライラを減らす最大のコツは、つまずきの”場所”を特定すること。最初から全部を教え直そうとするから、苦しくなるのです。次のように、段階を一つずつ確認してみてください。
- 「お話、どんな様子だった?」(読む・イメージできている?)
- 「足すお話かな、引くお話かな?」(立式で迷っている?)
- 「式は書けた?じゃあ計算してみよう」(計算でつまずいている?)
すると、「実は場面はイメージできていて、立式だけ分かっていない」など、本当の課題が見えてきます。場面理解そのものでつまずいているなら計算はできるのに解けない子へのイメージ力の育て方、立式で迷うなら数字だけ見て解く子への立式の教え方というように、的を絞って手を打てます。一段に絞れた時点で、教える側の負担は半分以下になります。
答えを言わずに導く「ヒントの階段」
文章題で親がいちばんやりがちなのが、もどかしくて答えや式を先に言ってしまうこと。でもそれでは、子どもが自分で考える機会が奪われます。とはいえ「自分で考えなさい」と突き放すのも酷。そこで役立つのが、ヒントを少しずつ小出しにする「ヒントの階段」です。下の段から順に出し、解けたらそこで止めます。
| 段 | かける言葉 | ねらい |
|---|---|---|
| 1段目 | 「もう一回、ゆっくり読んでみよう」 | 読み飛ばしを拾う |
| 2段目 | 「どんなお話だった?教えて」 | 場面をイメージさせる |
| 3段目 | 「絵にしてみようか」 | 場面を見える化する |
| 4段目 | 「お話、増えた?減った?」 | 立式のヒントを出す |
| 5段目 | 「じゃあ一緒に式にしてみよう」 | 最後だけ一緒に |
ポイントは、いきなり最上段(答え)から渡さないこと。1段目で解ければ、それがいちばん力になります。下の段で解けたら、すかさず「自分で気づけたね」と認める。これを続けると、子どもは「困ったらこの順番で考えればいいんだ」と、自分の中にヒントの階段を持つようになります。
「一段ずつ」「プロセスを褒める」「答えを待つ」
ヒントの階段とあわせて、関わり方を3つだけ変えてみましょう。
ひとつめは、一度に全部を求めないこと。「読んで、考えて、式にして!」と一気に言うと、子どもはパンクします。今日は「お話を絵にする」だけ、と一段に絞る。小さく区切るだけで、親子双方がラクになります。ふたつめは、答えでなく”プロセス”を褒めること。正解できなくても、「お話をちゃんとイメージできたね」「足し算だって気づけたね」と、途中のできた段階を認めます。みっつめは、答えを先に言わず、待つこと。「どう思う?」と問いかけて、ゆっくり5秒待つ。この沈黙が、子どもが自分で考える力を育てます。待つのは、教えるより難しい。でも、いちばん効きます。頭の中で「1、2、3、4、5」と数えるくらいの気持ちで、ぐっとこらえてみてください。
やりがちだけど、逆効果な教え方
良かれと思ってやりがちな、文章題ならではのNGもあります。ひとつは、「ちゃんと読みなさい」とだけ言うこと。子どもは「ちゃんと」が何かが分からないので、責められたとしか感じません。「どこで止まったか一緒に見よう」と具体的に。もうひとつは、解き方を毎回先回りして教えること。「こうやって、こう」と手順を渡し続けると、自分で考えない子になります。そして、できない量に注目すること。「まだこれだけ?」より、「ここまでできたね」と、できた分に光を当てるほうが、子どもは前に進めます。
「文章題の教えにくさ」と「親の感情」は分けて考える
ここまでは文章題特有の教えにくさへの向き合い方ですが、文章題に限らず「つい怒鳴ってしまう」「カッとなって手が出そうになる」といった、教える場面全般の感情のコントロールは、また別のテーマです。文章題のやり方を工夫しても、自分の怒りが止められなくてつらい、というときは、そちらを切り分けて手当てするのが近道。教える場面全般の怒り・イライラとの付き合い方は、怒鳴ってしまうときの対処法にくわしくまとめています。文章題全体の進め方は文章問題が解けないのは国語力のせい?もどうぞ。
想定エピソード:全部教えるのを、やめた日
以前、文章題を教えるたびにイライラして、子どもを泣かせてしまうことに悩んでいたお母さんがいました。「読んで、考えて、式にして」と一度に求めては、できないわが子に焦り、声が大きくなる。その繰り返しだったそうです。
あるとき、全部を一度に教えるのをやめて、「どこまで分かった?」と一段ずつ確認するようにしたといいます。すると「お話は分かってる、でも足すか引くかで迷ってる」と判明。つまずきは一段だけで、あとはできていた。「全部できないと思っていたのは、私の勘違いだった」と気づいてからは、的を絞って声をかけられるようになり、泣かせる回数がぐっと減ったそうです。
よくある質問
Q. 「どこで詰まった?」と聞いても、子どもが答えられません。
A. うまく言葉にできない子も多いです。その場合は親が「お話は分かる?」「足すか引くか分かる?」と、選びやすい形で順に聞いてあげてください。どこでうなずき、どこで止まるかで、つまずきの場所が見えてきます。
Q. 待っていると、子どもがふざけたり集中が切れたりします。
A. 長く待ちすぎると逆効果なこともあります。5秒ほど待って反応がなければ、ヒントの階段を1段おろしてあげてください。「待つ」と「ヒントを出す」を交互に。沈黙で固まらせ続けないのがコツです。
Q. 結局、答えを教えてしまうことが多いです。
A. もどかしさからつい、はよくあることです。完全にやめなくて大丈夫。「最後の一歩だけ一緒にやる」と決めて、そこまでは待つ。少しずつ、待てる範囲を広げていけば十分です。
Q. 教えていると、どうしても自分がイライラして止まりません。
A. それは文章題の教え方というより、感情のコントロールのテーマです。無理に一人で抑え込まず、怒りそのものへの対処法を別に持っておくと楽になります。つらいときは、教える役を教材に預ける選択もあります。
Q. 下の子もいて、ゆっくり待ったりヒントを出したりする余裕がありません。
A. その状況で毎回じっくり伴走するのは、誰でも難しいです。全部を完璧にやろうとせず、「今日はヒントの2段目まで」と決めるだけでも十分。余裕がない日は、段階を踏んで教えてくれる教材に任せ、あなたは「がんばったね」と声をかける役に回ってOKです。
「どこまで分かった?」が、親子を救う
文章題の教え方でイライラするのは、考える段階が多く、つまずきの場所が見えにくいから。だからこそ、「どこで止まっているか」を一段ずつ見極め、一度に求めず、ヒントは階段のように小出しにして、できた段階を褒める。これだけで、教える側の焦りはふっと和らぎます。
毎回しんどいときは、段階を踏んで文章題を教えてくれる教材に任せるのも、立派な選択です。親が全部抱えなくていいのです。でも、お子さんにとっていちばん安心なのは、間違えても「どこまで分かったか、一緒に見てみようね」と言ってくれる人がそばにいること。今日、文章題で詰まったら、責める代わりにこの一言を。「だいじょうぶ。どこまで分かったか、ママと一緒に見てみよう」。その一言が、毎晩のバトルを、少しずつ穏やかな時間に変えていきます。

