計算問題はスラスラ解けるのに、文章題になったとたん、鉛筆が止まる。「これはもう、国語力がないってこと……?」と、算数だけでなく国語まで心配になっていませんか。あるいは、慌てて国語のドリルを買い足したのに、いっこうに文章題が解けるようにならない。そんな空回りを感じている方もいるかもしれません。
先に、いちばん大事な結論をお伝えします。小1の算数の文章題でつまずく原因は、多くの場合「国語力」ではありません。 必要なのは、文を読んでその場面を頭に思い浮かべる力(場面をイメージする力)と、足すか引くかを決める力(立式)です。ここを取り違えてやみくもに国語ドリルを増やすと、本当の課題は手つかずのまま、子どもの負担だけが増えてしまいます。この記事では、文章題が解けない本当の理由を整理し、解くまでにのぼる「3つの階段」のどこで詰まっているかを見分けたうえで、家での教え方や問題の型まで、お子さんに合うページへご案内していきます。
なぜ「計算はできるのに文章題はできない」の?
計算と文章題は、使う力がまったく違います。計算の「8+5」は、やることが目の前にあって、手順を覚えれば解けます。一方で文章題は、「文を読む → 場面を思い浮かべる → 足すのか引くのか決める → 式にする → 計算する」と、いくつもの段階を一人でたどる必要があります。
つまり、文章題は「読む」と「計算する」の間に、”場面をイメージして立式する”という見えないステップが挟まっています。計算が得意でも、この見えないステップでつまずけば、答えにはたどり着けません。だから「計算はできるのに文章題はできない」は、ごく自然に起こること。決して、頭が悪いわけでも、努力が足りないわけでもありません。
文章題は「3つの階段」をのぼって解く
文章題を解く流れは、3つの階段をのぼるイメージで整理できます。お子さんがどの段で止まっているかが分かると、打つ手がはっきりします。
| 階段 | やること | つまずきのサイン | くわしく見るページ |
|---|---|---|---|
| 第1段:読む | 文の場面を思い浮かべる | 文は読めるのに場面が浮かばない | 計算はできるのに解けない子へ |
| 第2段:絵にする | 場面を○や図にして見える化 | 図を描こうとしない・嫌がる | 図を書かない子へ |
| 第3段:式にする | 足すか引くかを決めて式を作る | 数字だけ見て適当に+−を選ぶ | 数字だけ見て解く子へ |
ポイントは、つまずいている段にだけ手を打てばいいということ。第3段(立式)で迷う子に国語ドリルを足しても、的が外れています。逆に第1段(読む・イメージ)で止まっている子に計算練習をさせても、文章題は解けるようになりません。まずは、お子さんがどの段にいるかを見てあげてください。
「国語力のせい」という思い込みを、まず手放そう
「文章題ができない=読解力(国語力)がない」と結びつけてしまう方は、とても多いです。でも、ここは慎重に。
たしかに、文字そのものが読めない・お話の内容がまるで分からない場合は、国語の”読む力”のケアも必要です。その場合は国語の読解として、別に向き合うことになります。でも、小1の算数の文章題で圧倒的に多いのは、「文は読めているのに、その場面を数の世界に翻訳できない」というつまずき。これは国語力ではなく、算数の”場面イメージ力”の問題です。原因が違えば、打つ手も変わります。国語ドリルをいくら増やしても、算数の立式でつまずいている子は解けるようになりません。「国語力のせい」という思い込みを手放すことが、遠回りをやめる第一歩です。
第1段でつまずく子へ:場面が「浮かぶ」ように
「りんごが3こ、あとから2こもらった」を読んで、頭の中に”りんごが増えていく様子”が浮かぶか。これが第一関門です。場面が浮かばない子に、いきなり式を求めても無理があります。まずは文を区切って読み、「だれが」「何を」「どうした」を一緒に確かめると、ぼんやりした文章が、見える場面に変わっていきます。計算はできるのに解けない子の、イメージ力の育て方は計算はできるのに文章題が解けない子への向き合い方でくわしく解説しています。
第2段でつまずく子へ:頭の中を「絵」に出す
場面が浮かびにくい子には、文章を絵や図に描き起こすのがいちばんの近道です。とはいえ「図を描きなさい」と言っても嫌がる子が多いのも事実。きれいな絵でなくていい、○や棒で十分だと伝えるだけで、ぐっと描きやすくなります。絵を嫌がる子が自分から描き出すコツは図を書かない子が描き出すきっかけ作りで紹介しています。
第3段でつまずく子へ:足すか引くかを決める
場面が浮かんでも、「+なのか−なのか」で迷う子は多いものです。とくに、文を読まずに数字だけ拾って、適当に式を作ってしまう癖は要注意。「ふえる」「あわせる」「のこり」といったお話の流れから、足し算か引き算かを決める練習が効きます。数字だけ見て解いてしまう子への立式の教え方は数字だけ見て適当に解く子への立式の教え方へ。
小1の文章題には、3つの「型」がある
小1で出てくる文章題は、実はパターンが限られています。型を知っておくと、親も落ち着いて向き合えます。
| 型 | お話の例 | 式 |
|---|---|---|
| あわせていくつ(合併) | 赤い花が3本、白い花が2本、あわせて何本? | たし算 |
| ふえるといくつ(増加) | あめが4こ、3こもらった、ぜんぶで何こ? | たし算 |
| のこりはいくつ(減少) | クッキーが6まい、2まい食べた、のこりは何まい? | ひき算 |
同じ足し算でも「あわせて」と「ふえると」では、頭に浮かぶ場面が違います。お子さんがどの型でつまずきやすいかを知っておくと、「あ、これは”のこり”の型だね」と落ち着いて声をかけられます。
やりがちだけど逆効果な、2つの関わり方
よかれと思ってやりがちで、実は文章題嫌いを早める対応が2つあります。ひとつは、国語のドリルをひたすら増やすこと。原因が「場面イメージ」や「立式」にあるのに読解ドリルを足しても的外れで、子どもは「こんなにやってるのにできない」と自信をなくします。もうひとつは、つい答えや式を先に言ってしまうこと。もどかしくて口を出したくなりますが、「8たす5でしょ」と教えてしまうと、自分で場面を考える機会が奪われます。ぐっとこらえて、「これは増えるお話かな、減るお話かな?」と問いかけて待つ。この5秒の我慢が、考える力を育てます。
文章題は、教える側もイライラしやすい単元です。「どこで詰まっているか」が見えにくいからこそ、つい口調が強くなる。泣かせずに伝える関わり方は文章題を泣かせずに教える親の関わり方にまとめました。問題集で練習を重ねたい場合は、つまずきの原因別に選ぶ文章題ドリルの選び方もどうぞ。なお、純粋な「読む力」そのものを育てたい場合は、国語の読解として別に取り組むのがおすすめです(国語の読解ページは準備中のため、ここでは案内のみにとどめます)。
想定エピソード:絵を描いたら、式が出た
以前、計算は得意なのに文章題でいつも固まる子に、国語のドリルを買い足していたお母さんがいました。でも、いくらやっても文章題は解けるようにならず、親子で疲れていったそうです。
あるとき、文章題を「読む」のをやめて、まず一緒に絵を描いてみたといいます。「りんごが3こ、2こもらった」を、○を3つと2つ描いて並べる。すると子どもが「あ、ぜんぶで5こだ」と、自分で式を口にした。「足りなかったのは国語力じゃなくて、お話を絵にする力だったんだ」と気づいてからは、まず絵にする習慣をつけることで、文章題への苦手意識がやわらいでいったそうです。
よくある質問
Q. 文章題が苦手なので、国語の読解ドリルを増やすべきですか?
A. 文字が読めていて場面の翻訳でつまずいているなら、国語ドリルは的外れになりがちです。まずは「読む・絵にする・式にする」のどこで止まっているかを見極めて、その段に合った練習を。読む力そのものが弱い場合だけ、国語の読解を別に補ってください。
Q. 「あわせて」「のこり」など、言葉で+−を覚えさせていいですか?
A. 入り口としては有効ですが、言葉だけで丸暗記させると、ひねった問題で崩れます。「ふえるお話だから足す」と、お話の場面とセットで覚えるのが安全。最終的には、場面を思い浮かべて自分で判断できることを目指します。
Q. 答えは合うのに、式を書きたがりません。
A. 頭の中で解けているなら、まずはその力を認めてあげてOKです。ただ学年が上がると式が必要になるので、「どう考えたか教えて」と口で説明させ、それを一緒に式にしてみる練習を少しずつ。書く負担が大きい子は、絵から式への橋渡しがおすすめです。
Q. 毎日つきっきりで教えるのが大変です。
A. 文章題は親の負担が大きい単元です。場面をイラストで見せてくれる教材に練習を任せ、あなたは「どんなお話だった?」と聞く役に回る方法もあります。抱え込まず、一緒に絵を描く時間だけ大事にする、くらいでも十分です。
まずは「一緒に絵を描く」ところから
文章題が解けないのは、お子さんの国語力が低いからではなく、「文を読んで、その場面を数の世界に翻訳する」という、算数ならではの難しい段でつまずいているだけです。だからこそ、国語ドリルを増やすより、絵や図で場面を見える化し、「読む→絵にする→式にする」の階段を一緒にのぼってあげることが近道。つまずき全体の地図は小1算数のつまずき全まとめもあわせてどうぞ。
毎日付き合うのが大変なときは、場面をイラストで見せながら文章題に慣れさせてくれる教材に頼るのも一つの手です。でも、どんな教材より効くのは、あなたが隣で一緒に考えてくれること。今日はまず、文章題が解けなくても責めずに、「一緒に絵を描いて、どんなお話か見てみようか」と、場面を思い描くところから始めてみてください。「わかった!」の瞬間は、必ずやってきます。

