小1でひらがなが覚えられない…焦らなくて大丈夫|忘れる子への声かけと教え方

小学校1年生

「もう小1なのに、ひらがながなかなか覚えられない」「昨日は書けたのに、今日はもう忘れている」。練習帳をめくるたびに、不安で胸がいっぱいになっていませんか。周りの子がスラスラ書いているように見えると、なおさら焦ってしまいますよね。お子さんが「もうやりたくない」と鉛筆を放り出すたびに、どう声をかけたらいいのか分からなくなる。そのお気持ち、痛いほど分かります。

先に、いちばん安心してほしい結論をお伝えします。小1でひらがなを覚えるのに時間がかかるのは、ごく普通のことです。 「覚えられない」のではなく、「いま、覚えていく途中」なだけ。46文字を一気に覚えてしまう子のほうが、むしろ少数派です。そして大事なのは、やみくもに練習帳を増やすことではなく、「うちの子は、覚える道のりのどこで止まっているのか」を見つけてあげること。止まっている場所が分かれば、効く手当てはまるで変わってきます。このページは、そのための案内所です。つまずきの正体、今どこで止まっているかの見分け方、覚える時期の目安、そして家でできる関わり方まで、順番にご案内します。

「覚えられない」の正体は、読む力と書く力が別ものだから

ひとくちに「覚えられない」といっても、その中身は大きく2つに分かれます。ひとつは、見た文字が何と読むのかが分かる「読む力(認識する力)」。もうひとつは、頭の中から形を思い出して、手で再現する「書く力」です。

このうち、書く力のほうが、読む力よりもずっと難しくて、時間がかかります。読むのは「目の前の形を答える」だけですが、書くのは「何も見ないで、記憶から形を引っぱり出し、手を動かして再現する」という、何段階もの作業だからです。だから「読めるのに書けない」というのは、つまずきというより当たり前の段階であって、決して怠けではありません(くわしくは読めるのに書けない子のハードルの下げ方のページでお話ししています)。

そもそも文字を覚えるには、形を見分ける力、手を思いどおりに動かす力、覚えておく記憶の力など、いくつもの発達がかみ合う必要があります。これらの発達には数ヶ月単位の個人差があるので、今ゆっくりに見えても、心配しすぎなくて大丈夫。準備が整えば、ある日急にスッと書けるようになる子も、本当にたくさんいます。

ひらがなを覚えるには「4つの階段」がある

「読む」と「書く」のあいだには、もう少し細かい段差があります。私はいつも、ひらがなを覚えるまでの道のりを「4つの階段」としてお話ししています。この階段は、下から順にのぼっていくもの。お子さんが今どの段で足踏みしているのかが分かると、「次に手伝うこと」がはっきりします。

階段どんな段階かこの段でよく起きること
①見る(形を見分ける)「あ」と「お」、「わ」と「ね」など、似た形を別の字として見分ける似た字を混同する/鏡文字(左右反転)になる
②読む(形と音をつなぐ)見た文字を「あ」と声に出して読める一字ずつなら読めるが時間がかかる
③なぞる(手で線をたどる)お手本をなぞって、正しい向き・順番で線を引ける書き順がめちゃくちゃ/鉛筆がうまく運べない
④思い出して書く(記憶から再現)何も見ずに、記憶だけで形を書ける読めるのに書けない/昨日書けた字を今日忘れる

ここで知っておいてほしいのは、多くの子のつまずきは、いちばん上の「④思い出して書く」で起きているということです。読めるし、なぞれる。でも、何も見ずに書こうとすると手が止まる。これは能力の問題ではなく、4つめの階段がいちばん高いから。ここで「なんで書けないの」と急かしてしまうと、子どもは1段目から登るのが怖くなってしまいます。お子さんがどの段にいるかをそっと見てあげると、声かけの温度がぐっとやわらかくなります。

以前、「何度書かせてもひらがなを覚えないんです」と相談に来たお母さんがいました。けれど、よくよくお子さんの様子を聞いてみると、看板やお菓子の袋の字は読めている。つまり①②の段はのぼれていて、止まっていたのは「④思い出して書く」だけだったのです。書く練習を減らし、お風呂で「『あ』の字、空に書いてごらん」と指で書く遊びに変えたら、ひと月ほどで、頼んでもいないのに自分の名前を書くようになっていました。手当ての場所が合うと、子どもは驚くほど軽やかに動き出します。

お子さんの様子はどれ? 入り口別ガイド

4つの階段を、もう少し具体的な「お子さんの様子」に置き換えてみます。近いものから、その子に合った記事をのぞいてみてください。どれかひとつに決めきれなくても大丈夫。複数が重なるのは、小1ではむしろふつうです。

文字が左右さかさまになる(鏡文字)

「し」が逆向き、「て」が反転してしまう。これは①「見る」の段で、脳がまだ左右の向きを整理している途中のサインです。低学年にはとてもよくあることで、無理に直すより見守りたい時期があります(脳の異常?無理に直さず見守る時期と声かけ)。

似た字を間違える(わ・れ・ね など)

形のよく似た字を混同してしまう。これも①「見る」の段の話で、形ではなく「言葉」でセットにして覚えさせる声かけが効きます(似た字を”言葉”で覚えさせる声かけ)。

書き順がめちゃくちゃ

自己流の書き順で、好きなように書いてしまう。これは③「なぞる」の段。バトルにせず、指でなぞる遊びから楽しく直していくコツがあります(バトルにせず直す「指書き」のすすめ)。

読めるのに書けない

音読はできるのに、いざ書くとなると手が止まる。これは④「思い出して書く」の段で、怠けではなく、書く力が育っている途中だからです(怠けじゃない理由とハードルの下げ方)。

左利きで書きにくそう

お手本が手で隠れる、書いたそばから手でこすれて汚れる、といった左利きならではの困りごと。これは能力ではなく、環境づくりで大きく変わります(はらいと汚れを減らす親の環境づくり)。

「きゃ」「っ」「ー」が書けない

拗音・促音・長音は、ふつうのひらがな46文字を覚えたあとにやってくる、もうひとつの関門です。耳で聞こえる音と、書く形がずれるのが難しさの正体です(拗音・促音・長音をやさしく教えるコツ)。

なお、「字は覚えているけれど、書くと汚い・マスからはみ出す」という場合は、覚える力ではなく手先の発達(運筆)の話です。これは別の入り口なので、字が汚い子への運筆サポートのほうが、お子さんに近いかもしれません。覚える問題なのか、書く運動の問題なのかを見分けると、打つ手がはっきりします。

あせらないで。ひらがな習得の「時期カレンダー」

「もう6月なのに、まだ全部書けない」と焦ってしまうのは、ゴールの時期を早く見積もりすぎているからかもしれません。小1のひらがなには、学校が想定しているおおよその進み方があります。先にこの地図を持っておくと、「今はまだ途中なんだ」と落ち着いて構えられます。

時期学校・家庭でのおおよその様子親の心構え
入学前〜入学直後自分の名前や好きな字が読める・少し書ける子が多い。全部書けなくて当たり前「書けない」を出発点にしない。読めれば十分なスタート
1学期(4〜7月)学校で46文字を順に習う。鏡文字・書き順の乱れが続出する山場乱れは”通り道”。直すより、嫌いにさせないことを優先
夏休み1学期の総ざらい。読めるが書けない字が残るのがふつうあせって詰め込まず、1日2〜3文字を遊び感覚で
2学期以降だんだん思い出して書けるように。拗音・促音・長音が登場46文字が完璧でなくても次に進んでOK。並行で育つ

注目してほしいのは、1学期は「乱れて当たり前の時期」だということです。鏡文字も、自己流の書き順も、この時期にいちばん出ます。ここで完璧を求めて何度も書き直させると、文字そのものが嫌いになってしまう。1学期は「正しく書く」より「文字って楽しい」を貯金する時期だと思っていてください。思い出して書く力は、2学期以降にぐんと伸びてくる子がたくさんいます。

どの入り口にも効く、家での3つの関わり方

入り口がどこであっても、土台になる関わり方は同じです。これだけ先に押さえておくと、声かけが自然とやわらかくなります。

ひとつめ。「書く」より「読む・見つける」から始めること。 いきなり書かせると、いちばん高い4段目をいきなり登らせることになり、すぐ嫌になってしまいます。「あ、あの看板に『あ』があるよ!」と、身のまわりの文字を宝探しのように一緒に楽しむ。文字との最初の出会いが「楽しい」になることが、何より効きます。お風呂のフタや車のナンバー、お菓子の袋。家じゅうが練習帳になります。

ふたつめ。46文字を一度に求めないこと。 1文字覚えられたら、うんと大げさにほめてあげてください。「『く』が書けたの!? すごいじゃない!」と一緒に喜ぶと、子どもは「もっと覚えたい」と前のめりになります。1日に2〜3文字、その子のペースで十分です。

みっつめ。忘れても、決して責めないこと。 忘れるのは脳が情報を整理している自然な過程です。何度でも明るくくり返し出会ううちに、ちゃんと定着していきます。お子さんが書けた字を見つけたら、上手か下手かの前に、「これ、すごく上手に書けてるね!」と、書けた事実そのものに笑顔で声をかけてあげてください。その小さな喜びが、次の1文字に向かう力になります。

良かれと思って、逆効果になりやすい声かけ

がんばっている親ほど、よかれと思ってかけた言葉が、文字嫌いを深めてしまうことがあります。ドキッとしても大丈夫。気づいた今日からやめれば、ちゃんと間に合います。

ついやりがちな声かけこう言いかえる
「昨日できたのに、なんで忘れたの」「もう一回いっしょに書いてみよう。すぐ思い出すよ」
「何回書いたら覚えるの」「今日はこの3文字だけ。できたらおしまいにしよう」
「ちゃんと書きなさい」「この『の』のくるん、上手に回れてるね」
「お友だちはもう書けてるよ」(比べる言葉は飲み込む。その子の昨日とだけ比べる)

いちばん避けたいのは、「昨日できたのに、なんで忘れたの」です。これは子どもにとって、頑張ったのに責められる体験になってしまいます。忘れることは失敗ではなく、覚えていく途中の自然な一コマ。そう思って、もう一度いっしょに書いてあげてください。

親が抱え込む前に、頼っていい相手がいます

最後にお伝えしたいのは、ひらがなと向き合うのは、子ども以上に親の根気が削られるということです。あなたが疲れ切ってしまっては元も子もありません。

なかなか定着せず、生活面でも気になることが続く場合は、発達には大きな個人差があるので、ひとりで判断しようとせず、担任の先生やスクールカウンセラー、地域の相談窓口に一度聞いてみてください。家庭で「これは問題なのか」と抱え込むより、専門家に様子を共有するほうが、ずっと早く気持ちが軽くなります。親の仕事は、わが子が安心して文字に向かえる空気をつくること。それで十分なのです。

家での練習に親子で疲れてきたら、その子の「分かるところ」までさかのぼって進められる通信教育やタブレット教材に、一部を任せるのも立派な選択です。ゲーム感覚で文字に親しめるものも多く、親が横でつきっきりにならなくてもいいぶん、お互い笑顔でいられる時間が増えます。

よくある質問

Q. ひらがなは、いつまでに全部書けるようになれば大丈夫ですか?
A. 個人差がとても大きいですが、1年生のうちにだんだん書けるようになっていけば心配いりません。1学期で全部完璧、と考えると焦りますが、学校は1年かけてくり返し定着させていきます。大事なのは「いつまでに」より、その途中で文字を嫌いにさせないこと。嫌いにさえならなければ、整ったときにちゃんと書けるようになります。

Q. 何度練習させても忘れます。練習量が足りないのでしょうか?
A. 量より、「思い出して書く」の前の段階が育っているかを見てあげてください。読める・なぞれるのに書けないなら、それは練習不足ではなく、いちばん高い段にいるだけ。書く回数を増やすより、空書き(指で空中に書く)や、おしゃべりしながら1文字ずつ楽しむほうが、記憶に残りやすいことがよくあります。

Q. 鏡文字や変な書き順は、すぐ直すべきですか?
A. 1年生のうちは、あわてて直さなくて大丈夫なことが多いです。鏡文字も書き順の乱れも、この時期によく見られる発達の通り道。強く直しすぎると、書くこと自体が嫌になってしまいます。気になるときの見守り方は、それぞれ鏡文字書き順のページでくわしくお話ししています。

Q. ドリルを買えば、ひらがなは覚えますか?
A. 合えば助けになりますが、「買えば安心」ではありません。お子さんがどの階段で止まっているかに合っていないと、かえって「できない時間」が増えてしまいます。まずはこのページの4つの階段で当たりをつけ、その子に必要な入り口から選ぶのが先決です。薄いドリルを1冊、楽しく続けられるものから始めれば十分です。

ひらがなは「ゆっくり仲良くなる」もの

小1でひらがなが覚えられないのは、能力の問題ではなく、いま覚えていく途中だからです。読む力と書く力はべつの力で、思い出して書く力はいちばん最後に、ゆっくり育ちます。焦って詰め込むより、4つの階段のどこにいるかを見ながら、1文字ずつ仲良くなっていくくらいの気持ちでいきましょう。

昨日書けた字を今日忘れていると、つい不安がこみ上げますよね。でも、文字は「覚える・覚えない」の白黒ではなく、「だんだん仲良くなっていく」もの。くり返し出会ううちに、自然と心を許したお友達になっていきます。今日は、お子さんが書けた1文字を見つけて、「これ、すごく上手に書けてるね!」と満面の笑みで伝えてあげてください。その小さな喜びが、次の1文字に向かう力になります。焦らず、その子のペースで大丈夫ですよ。

国語全体のつまずきを見渡したいときは、文字・音読・読解のどこから手をつけるかを整理した小1国語のつまずき全体マップもあわせてどうぞ。