小1算数を何度教えてもわからない…宇宙語に聞こえる子への教え方

小学校1年生

何回も、言葉を変えて、ていねいに説明しているのに、まるで宇宙語を話しているかのようにポカン。「どうして、こんなに言ってるのに伝わらないの……」と、心が折れそうになりますよね。だんだん自分の声が大きくなって、子どもは黙り込み、最後はお互いぐったり。そんな繰り返しに、疲れ果てている方も多いと思います。

先に、いちばん大事な結論をお伝えします。何度教えても通じないのは、お子さんの理解力が低いからでも、あなたの教え方が下手だからでもありません。大人の「言葉による説明」が、低学年の子の”分かり方”に合っていないだけです。だから、言葉を減らして「見せる・さわる」に切り替えたり、その子に合った”入り口”を選んだりすると、同じ内容が驚くほどスッと伝わります。この記事では、なぜ言葉での説明が通じないのかを説明したうえで、その子の「分かり方の入り口」を見つける方法、宇宙語状態を抜け出す具体的な教え方、やってしまいがちなNG、そして発達が気になるときの目安まで、順番にお話ししていきます。

なぜ、言葉で説明しても通じないの?

私たち大人は、つい「言葉」で教えようとします。「ここがこうだから、こうなるでしょ?」と。でも、幼児から小学3年生ごろまでの子は、まだ「具体的なもの(ブロックや指)」を手でさわって理解する、感覚的な時期にいます。

言葉だけの説明は、この時期の子にとって抽象的すぎるのです。とくに算数は、「数」という目に見えないものを扱うので、なおさら頭の中だけでは追いきれません。つまり「通じない」のは、説明の中身が悪いのではなく、”伝え方のチャンネル”が合っていないサイン。ラジオの周波数が少しズレているだけ、とイメージしてください。チャンネルさえ合えば、まったく同じ説明が、ちゃんと届くようになります。

その子の「分かり方の入り口」を見つけよう

実は、子どもによって、すんなり理解できる”入り口”は違います。大きく分けて3つ。我が子がどのタイプに近いか、ふだんの様子を思い浮かべながら見てみてください。

分かり方の入り口こんな子効く教え方算数での具体例
見て分かる(目の子)絵本・図形・動画が好き絵・図・色で見せる数を○で書いて、10のかたまりを丸で囲む
さわって分かる(手の子)体を動かす・工作が好きブロックや指を動かすおはじきを8個と2個、手でくっつけて10にする
お話で分かる(耳の子)おしゃべり・ごっこ遊びが好き生活の場面の物語にする「りんごが8個、5個もらったら全部でいくつ?」

ここでのポイントは、「正しい教え方」は一つではないということ。あなたが説明しても通じないのは、たまたま、その子の入り口とは違うチャンネルで話していただけかもしれません。いくつか試して、お子さんが「あ!」と目を輝かせる入り口を見つけてあげてください。きょうだいでも入り口は違うので、「上の子はお話で分かったから」と同じやり方にこだわらないのもコツです。

「宇宙語」を抜け出す、3つの切り替え

伝わらないと感じたら、説明の”量”ではなく”やり方”を切り替えます。次の3つを順番に試してみてください。

  • 言葉を「減らす」:伝わらないとき、大人はつい言葉を足してしまいますが、情報が増えるほど子どもの頭はパンクします。説明は短く、ワンステップずつ。「まず10をつくろう」だけ言って、できたら次へ。一度に一つだけ、が鉄則です。
  • 「見せる・さわる」に変える:「8たす5は……」と言葉で説明する代わりに、おはじきやブロックを実際に並べて見せます。8個と5個を置いて、「10のかたまりをつくってみよう」と手を動かさせる。目で見て、手でさわって納得した感覚は、言葉の何倍も深く残ります。
  • その子の入り口に合わせる:上の表を思い出して、目の子には絵を、手の子にはブロックを、耳の子には生活の物語を。ハマる入り口に変えるだけで、さっきまでの「?」がうそのように進み出すことがあります。

「具体物」は、何を使えばいい?

「見せる・さわる」と言われても、何を用意すればいいか迷いますよね。特別な教材は要りません。家にあるもので十分です。

おはじきやブロックは、数を「くっつける・分ける」のがひと目で分かるので、繰り上がり・繰り下がりに最適です。指は、いつでも使えて持ち運び不要の最強の道具。「指を使うとクセになる」と心配する声もありますが、低学年のうちは、まず数の感覚を体で覚えるほうが大切なので、無理にやめさせなくて大丈夫です。お金(おもちゃの硬貨)は「10円玉と1円玉」で十の位・一の位の感覚が育ちますし、お話タイプの子には、おやつやくだものを使って「分けっこ」するのが効きます。

大事なのは、目に見えない「数」を、目に見える・さわれるものに置き換えてあげること。その橋渡しさえできれば、子どもは自分の力で「分かった!」にたどり着けます。

いちばん避けたいのは、同じ説明をくり返すこと

やってしまいがちで、いちばん逆効果なのが、通じなかった説明を、声を大きくしてもう一度くり返すことです。子どもには「責められている」としか伝わらず、算数そのものが嫌いになってしまいます。同じ言葉を3回くり返すより、おはじきを1回出すほうが、ずっと早く届きます。

カッとなって出てしまう言葉も、子どものせいにしない言い方に置き換えておきましょう。

つい言ってしまう置き換えのひとこと
「だから、さっきもこう言ったでしょ!」「言葉だと難しいよね。ブロックでやってみよう」
「なんで分からないの!」「どこから分からなくなったか、一緒に見てみよう」
「ちゃんと聞いてる?」「ちょっと目で見てみよっか」

「伝わらない=やり方を変えるサイン」。そう思えるだけで、あなたの声のトーンが変わり、子どもも安心して向き合えるようになります。

「何度言っても通じない」が続いて、発達が気になるときは

ここまで試しても、どうしても通じない日が続くと、「もしかして、うちの子は何かあるのかな」と不安がよぎることもありますよね。

まず知っておいてほしいのは、発達のスピードには、もともと大きな個人差があるということ。小1の段階で「数の理解がゆっくり」なのは、決してめずらしくありません。多くは、入り口を変えたり、時間をかけたりするうちに追いついていきます。ですから、すぐに焦る必要はありません。

そのうえで、見せても・さわらせても数の感覚がなかなか育たない、勉強以外の生活面でも気になることが続く、という様子があるなら、発達には個人差があるので、担任の先生やスクールカウンセラー、地域の相談窓口に一度たずねてみると安心です。相談は大げさなことではなく、その子に合った関わり方を早めに知るための前向きな一歩。「うちの子の入り口」をプロと一緒に探せることも多いです。

想定エピソード:おはじきを出した瞬間

以前、繰り上がりの足し算が何度教えても通じず、悩んでいたお母さんがいました。「8と2で10、だから……」と言葉でくり返すたびに子どもはポカンとして、つい声が大きくなってしまう。そんな毎日だったそうです。

あるとき、説明をやめて、台所のおはじきを8個と2個、目の前に並べてみたといいます。「10のかたまり、つくれる?」と言うと、子どもは自分の手で2つをくっつけて、「あ、10になった!」と目を輝かせた。それからは、分からなくなったら言葉を足すのをやめて、まず何かを「見せる・さわらせる」を続けたそうです。「うちの子は耳より手の子だったんだ」と気づいてから、教える時間のイライラがぐっと減った、と振り返っていました。

よくある質問

Q. 具体物(おはじきや指)に頼ると、いつまでも卒業できないのでは?
A. 心配いりません。数の感覚が体に染み込むと、子どもは自然と頭の中だけで計算できるようになります。具体物は「ずっと使う道具」ではなく、「分かるまでの足場」。足場が要らなくなれば、子どもが自分から使わなくなります。

Q. いろいろ試しても、どの入り口もハマりません。
A. その日の体調や気分で、入り口が変わることもあります。一度でハマらなくても、日を変えて試すと急に通じることも。焦らず、何より「分からないことを責めない」を続けてください。それでも長く続くなら、相談窓口で一緒に探すのも手です。

Q. 私が教えると通じないのに、他の人だと分かるのはなぜ?
A. 親子は感情が入りやすく、お互い緊張してしまうからです。教え方の問題というより、関係の近さの問題。だからこそ、教える役を教材や第三者に任せると、すんなり通じることも多いのです。

Q. 通じないとイライラして、つい怒鳴ってしまいます。
A. 通じない時間が続けば、誰でも余裕をなくします。怒りそのものへの対処は怒鳴ってしまうときの対処法にまとめました。無理に一人で抱えず、親が教えずにすむ頼り先に任せる選択もあります。

必要なのは「説明上手」より「伝え方を変える柔らかさ」

何度教えても宇宙語に聞こえるのは、お子さんの頭が悪いからではなく、大人の言葉中心の説明が、感覚的な時期の子に合っていないだけ。言葉を減らして、見せて・さわらせて、その子の入り口に合わせる。たったこれだけで、ふさがっていた理解の扉が開くことは、本当によくあります。

「私の教え方が下手なんだ」と落ち込む必要は、まったくありません。あなたに足りないのは説明の技術ではなく、たったひとつ、「伝え方を変えてみよう」という柔らかさだけ。そしてそれは、この記事を読んでいる今、もう手に入っています。それでも毎回うまく伝えられず疲れてしまう日は、具体物やアニメーションで”見せて”理解させてくれる教材に頼るのも立派な選択です。教えるときのイライラ全体への向き合い方は、怒鳴る前に親ができることの全体像もあわせてどうぞ。

まずは今日、言葉で説明したくなったら、ぐっとこらえて「ブロックでやってみようか」と、まず手を動かすことから始めてみてください。通じた瞬間のお子さんの「あ、わかった!」の顔が、あなたのいちばんのごほうびになるはずです。